ピアノのうた



僕たちが広島の子どもたちと平和コンサート等の交流を始めてから10年。
被爆ピアノを全国に運んでコンサートを開いている広島の調律師、矢川光則さんとの出逢いがありました。
山形は東北芸術工科大学にて、芸術平和学の講義をさせていただき、翌日には東北の音楽高校に通う若きピアニストたちとカズンとでコンサートを開いたことがきっかけでした。

初めて触れたのはミサコのピアノという爆心地から1.8キロの距離で被爆したミサコさんのピアノ。
今の自分そのままで弾いてみようと語りかけるような思いで弾かせていただきました。
そんな交流から矢川さんに、被爆ピアノのうたを作って欲しいと言われました。
そうですね、考えてみますね。とお応えしたもののさてどうしたものか。
悩みの日々が続きました。半年以上悩み続けたでしょうか。
あるとき、ふっとアイディアが浮かびました。そうだ、ピアノはその音色と弾き手の演奏で思いを奏でられるけど、もしもピアノがしゃべったらどんな歌詞になるだろうって。
悩み続けイメージを広げていた分、すぐにメロディーやピアノのフレーズが湧き出て来ました。
誰にでも奏でてもらえるようなピアノのフレーズから始まり、僕が初めて弾いた時、被爆ピアノが僕にどんな風に語ってくれたかなってことを言葉にしていきました。

広島長崎の被爆から70年の2015年7月。矢川さんのピアノ工房へお邪魔し、他のピアノもたくさん置かれている工房の一室で、
ピアノも歌もせーのでライブ録音しました。
何度も何度も僕らはハーモニーを合わせ、気持ちを合わせてテイクを重ねました。
その中からのベストテイクを今回収録しました。
今回レコーディングしたのは、大正9年製造の爆心地から1.5キロで被爆したピアノで、現存する中で最も古く、最も爆心地に近かった被爆ピアノです。(85鍵です)
弦もほぼ張り替えず、当時の状態をそのまま維持しながら調整されたそのピアノ。奇跡の音色とともに思いを込めて二重唱しました。


♪ 一人じゃ歌えないから あなたの伴奏で
  ほら希望のうたを 歌いましょう

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